伐 様より
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一面に染まり広がる紅。
自分以外の者がモノになる殺那。
大好きだったあのヒトの後ろ姿。
今も鮮明に焼付いている。
血がこんなにも紅いモノとは知らなかった…。
今も、アタナは俺のココロを支配する。
『鎖』
煩いナルトの声が何時になく勘に触る。
悪気の無い明るい声。
分かっている。
アイツが倖せしか知らない様なバカじゃないコトは。
でも、今はそんなに穏やかじゃいられない。
何処からかキンモクセイが香る。
今日は任務も無く、ナルトの提案でカカシの家に遊びに行くコトになった。
行く気なんて無かった。
「サスケもちゃんと来るんだよー」と、逃げようとした時に念を推された。
今は誰とも居たくないのに。
愉しい状態でなんか居たくない。
自分の存在意義を否定されそうで…。
キンモクセイが香る。
目の前に見えるカカシの家の隣にはキンモクセイが満開だった。
この香は思い出させる。
アイツに裏切られた、俺が俺であるコトを捨てた日を。
あの時も、血の嫌な匂いとともに、
紛れ込んだ甘いキンモクセイの香り。
ココロが縛りつけられる。
クルシイ…。
「カカシせーんせ、遊びに来たってばよっ」
「はい、いらっしゃい」
カカシはにこやかに出迎える。
「カカシ先生、お邪魔しまーす」とサクラも一言言って家に入る。
「ほら、サスケも入んな」
カカシは肩に手を掛け促した。
「やめろっ」
少し乱れた息遣いでサスケは言う。
脅えたとも取れなく無い表情で。
「どうした?」
「…何でもない…」
優しく声をかけないで。
放っておいて。
優しくされたら、
このシアワセなぬるま湯につかり過ぎたら、
逃げたくなる。
フクシュウと言う無意味な俺の義務から。
俺の存在意義を奪うな。
無意味で、不毛で在ろうとも、ソレがスベテだから。
本当は捕われているのは、俺だけなのかもしれない。
アイツには、さして重要なコトなんかじゃないのかもしれない。
コワイ…。
フクシュウが叶わないコトよりも、
フクシュウにより死を早めるコトよりも、
ソレよりも、
ソレ自体を明らめてしまうコトが。
その時、俺には何が残るんだろう?
果たされた時には、何が残るんだろう?
縛られた鎖からは開放されるんだろうか?
鈍い音を立てて、響く冷たい鎖。
ぬるま湯の様な、コワイ倖せの中で、ジワリと暖まる鎖。
倖せで居たくない。
ソレより下があるから。
倖せで居られない。
ソレじゃ安心出来ないから。
不倖せで在りたい。
コレ以上下が無いくらいに。
不倖せにして欲しい。
コレしか無いと、迷わずに居られる様に。
ナルトやサクラの明るい声。
カカシの優しい笑顔。
甘いキンモクセイの香。
アナタは何故俺を殺ささなかった?
俺はアナタの思い通りになってます。
アタナと言う鎖に縛られた人形に。
殺してください。
次にアナタにあった時には。
殺してあげます。
次にアナタにあった時には。
俺はどちらを選ぶんだろう…。
どちらを選べるんだろう…。
仲間のいるシアワセな日常。
解けてゆく鎖。
シアワセという不安。
組まれてゆく鎖。
スベテ、アナタの思い通りですか?
コロシテクダサイ。
コロシテヤリタイ。
終。