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vol.27

vol.27

JAMBOREE TOUR*98"fake fur"も折り返し地点を過ぎた10月6日火曜日。
その日も大歓声の中LIVEは終了し、メンバーは夕食をとるために打ち上げ場所である中華料理店の2Fにいた。
貸し切られた部屋のテーブルには湯気のたったおいしそうな大皿がいくつも並べられていて、
トロリとした甘酸っぱいそーすの匂いがクーンと漂ってくる。
通りを見下ろせる大きな窓ガラスには雨粒がいくつもつきはじめていた。
明日は多分、雨。
マネージャーの坂口氏が何やらけわしい顔で口を開いた。
「えー明日はファンクラブ会報の取材&写真撮りの日ですが、
現時点でよていしていたものがぁほとんど未定となりました。」

えっ、このあとのページはいったいどうなるの?

全国25283人のスピッツベルゲンの皆様(10月末現在)。
いやぁ・・・悩みました。本来ならば国重要無形民族文化財の長崎くんちの龍踊りなんかと一緒にカメラに収まるはずだったのに、雨でおくんちは1日延期。よていしていた企画も都合により大幅変更。ホントに明日のコトは誰にもわからないものです。この世の中だってそうですよ。いまだに日本の経済も安定しないし、考えてみれば音楽界もいつ不況の荒波がドッパーンとおしよせてくるかわかりませんな。これを読んでるあなただって明日は”ポケビ”ファンへと心変わりしているかもしれないし、”モーニング娘。”で歌っているかもしれません。スピッツも安心してはいられない。
そこで決めました。今回の企画はすべり止め企画!

題して
「スピッツやめても 手に職あれば・・・」


さて、トコロは変わって長崎市、風頭(かざがしら)にある小川凧(はた)店。
正月の男の子の遊びとして知られる「たこあげ」は長崎では「ハタあげ」と呼ばれ、
県の伝統的工芸品指定の大人のレジャーとして春と秋に楽しまれています。
ここは市内唯一の専業工房。凧づくりに挑戦するのはマサムネくんと崎ちゃんです。
今回は用意された骨組みに伝統的紋様の描かれた紙を唐チていき、実際にそれを上げるまでの体験です。
小川凧店の小川さんと一緒に、凧の図柄を選ぶことからはじまります。
マサムネくんは鳥の絵がついた『波に千鳥』
崎ちゃんは独楽(こま)の図柄の『ひきりょう』に決めました。
まずは小川さんにえんぴつで印をつけてもらい、タテ骨の部分からのりをつけていきます。
横のラインに一番下を合わせて全体ののりしろを平均して出さなくてはいけません。


小川さん(以下、小):(崎ちゃんを見ながら)おたくはそれでバッチリですよ。のりをつけるぐらいはね、そう差はでらんですけどこのあとですもんね。
崎ちゃん(以下、崎):フフン(鼻で笑う)。
マサムネ(以下、マ):出るやろね(差が)。
:どーすんだ、これ・・・(ひとり言)。
:(崎ちゃんを見ながら)いいですよ。いいですよ。上等です。次は糸を切らない様に、この竹の近くから直角になるようにひいて切って下さい。
:あーはいはい。
:≪ポカン≫
:ぴしゃーっとついたものりしろの部分をおこすんです。糸にそってまっすぐおきてきますから内側に軽ーるく曲げてやる。まん中を1mmぐらい手前に引いたような感じで曲げて・・・。
:あ、手前に・・・?
:ここで器用さがでてきます。
:紙を引くんですね。
:さ、やって下さい。
:≪キョトン≫ナハハハ(笑ってゴマカス)。
:(崎ちゃんに向かって)君の方は赤と青と白がひとつのラインにありますので、赤から白に引っ張ると赤の色がにじんできますから、青と白だけまずやって下さい。(マサムネくんに向かって)おたくの場合はラッキーでしたね。
:あ、はい。
:赤から白に引っ張ったらダメよね。今、無意識に引っ張りよったけど・・・。
:あ、はい。

2人共、とても素直です。

:君の場合もちょっと向こう向いとったらつけすぎとった(のりを)。
:ああ、そう・・・あぁにじんだぁ。
:はい。真中を手前に引きかげんでまず曲げる。
:あぁ真中を・・こう引くんですかー。
:いや、そうじゃなくて折り曲げてよ。
:あっ、いえっ、はい。
:引っ張ったってどうしようもなかけん。
:エヘヘ。これぐらいか。
:そう。ほらもうあっちは(崎ちゃんは)できた。(崎ちゃんを見て)うん。よかですよ。きれい。まっすぐできとる。バッチリです。ものすごきれかです。(マサムネくんを見て)おたくのもきれいになっとる。上等。器用かばい。

ここで見学していたテツヤくんは外へ散歩に・・・。じっとしていられない性格です。田村くんは2人を見守っています。

:ここのところは・・・あっ押さえるのか。
:そこはあとでへらでいれるけん、心配せんでよか。
:ヘヘヘ。のり足らんかったかな。
:うん。早よー言えば足らんかったけどさ、よかよか。

ここでお店のおくさんがカメラを持ってきました。とたんに背すじがのびて顔つきを変える2人。

:最後は目のとり方ですね。1番これが大事ですから・・・。まずはこのトンガリをもって穴をあけます。これは、こまか、あんたのは。
:あっ、ちっちゃいですか。
:どこに穴あけとるか見えんやった。
:エヘヘ、こんなもんすか。
:もっと。
:もっとぉ?どうやって結ぶとかいな。

師匠の方言に触発されておもわず博多弁になるマサムネくんです。

:はい、いよいよ最後です。上に結んだ糸を下までもっていってつまんで下さい。
:いっしょにつまむ?
:いえいえ上だけ。これば見とかんですか。下の糸だけ1/3たして下さい。
:あーはいはい。
:え、あ、とっぺんまで?
:いえいえ。このくらいですかね。ここをもってぶら下げた時に水平にういたら糸目があってるということです。
:あーうんうん。
:よしよし。あんたはおーとる。あんたは?よし上等ばい。

何とか出来上がりました。2人共上等のできだそうです。

:今から山に登りますけど、今日はちょっと風がまわってますね。長崎の凧のスタイルはほうり投げて水平飛行させて上げるんですけど、皆さんは誰かにもってもらってせーので上げましょう。

風頭公園は高台にあり港も見える自然がいっぱいの”はらっぱ”です。小川さんは空を見上げてじっと風をみています。午後から急に晴れ上がった空は太陽が眩しくて目をあけるのもやっと。これも晴れ男のおかげか・・・(以前マサムネくんは「スピッツの晴れ男参上!」というレギュラーをFM長崎でもっていた)。
さて、小川さんはうまく風に乗せて凧を上げています。糸をひいている姿が松方弘樹に似てカッコイイゾ。マサムネくん、その凧をひきついで悠々と上げます。


:ちょっともってみる?かなり強いよ。仔猫くらいだったら上空に上がりそーだね。
(遠くで見ている)田村くん。
田村(以下、田):草野、ムジャキな子供になってんですけど・・・。口が閉まってないトコが相当マジ。今何をしに来てるか、本人分かってないと思うよ。ほら歯も出てるからね。

テツヤくんは石のベンチで寝ています。マサムネくんは凧が下向いてる時に引っ張ったので急降下。車の中で待機中だったくすミュージックの鶴田氏も登場し、マサムネの凧を再び上げようと両手をあげてニコニコしています。

全員:うわぁー上がった上がった。キャッキャッキャッ。
:今、ひいてひいて。

残念ながら枝にひっかかりました。

:糸目がちょっと上がりすぎかな。ちょっとおとしてあげようか。

さて、マサムネくんの凧は修理中。その合間に大きなバッタやかまきりを見つけ、プチマニアの笑顔を見せています。
崎ちゃんの凧はすでに100mほど上がっています。実際に糸を引いてみると、かなり重い感触。しばらくすると指先が痛くなってきました。
テツヤくんも小川さんの凧をひかせてもらいました。すっかり日焼けの態勢で上半身は裸です。


:(崎ちゃんを見て)うまいようまいよ。あんた素晴らしい。あーちょっとゆるめて・・そんなひっぱったらだめ、ひっぱった・・だめ。

崎ちゃんの凧ひっかかりました。

:からまってる。

『女をあやつるようにあやつれないね。』これはサブマネ大倉氏の言葉です。
一方、こちらは東長崎の安田鼈甲(べっこう)。
テツヤくんと田村くんはべっ甲細工に挑戦です。
大きな鉄のなべの前に座った田村くんは、平たいべっ甲をペンチの様なものにはさんで熱湯につけています。隣では専門家の4人の方が作業中!キシューキシューキシューとものスゴク大きな音が仕事部屋にひびきわたっています。


:このままでいいんすか。力のかげんとかは。
安田さん(以下、安):ちょっと待ってね。いっぺんに教えてもできんから。とりあえず入れてごらん。ハイ、これに座って。
テツヤ(以下、テ):ハハハ。
:あ、だんだん。
:やわらかくなってくるでしょ。
:ウン。
:さからわずにグーッともっていくわけ、ずーっと持ってって。ギュッと押さえて。
:ギュッと押さえちゃっていいんですか。
:はい、それであげて・・ここ、離すと・・あっ。
:足りなかった?
:ちょっと足りなかったな。
:テツヤ、やってみる?
:OK?これ。
:はいはい、いいね。ちょうどいいね。だして。
:あげて・・。
:あーやっぱこれもあんまりよくなかったか。
テ&田:苦笑。
その他:爆笑。
:次の工程、行こか。

次の部屋では機会を使います。ギザギザのついた円盤のような丸い刃物で形をととのえていく作業です。スイッチを入れると勢いよく回りだしました。

:うちは職人じゃないね。メーカーです。基礎のやり方は一緒だけど、技術なしでアイデアでやってます。伝統工芸とは違う方法で職人さんが見たらこれは邪道だって言われるから・・・、やり方としては間違っていると・・。でも私達としては今の消費者のニーズにあったものをつくればいいんだから、できたらボリュームがあって、値段はぐっと落として・・。いわゆる私達はゆうたら金もうけ主義でやってますね(笑)。うん。この道具なんかもよそのべっ甲さんにはほとんどない。これも、あれも。


:若いっていうのはいいね。のみこみが早い。
≪スジがいいですか≫
:すじぃ・・・はどーかわからんけどのみこみはイイヨ。ここ・・お湯につけたらパァーになるからね。
:あぁ、なるほどね。
:はいそれぐらいで上げてごらん。で、手でキュッキュッとだいたいそれで丸くなってるよ。・・あれちょっとあってないね。ひと工程忘れとった。私が忘れとった。まぁいいか。ちょっとこっち来て・・。

再び機会の前へテツヤくんさらに形を美しく整えます。少しづつけずって・・。

:うん。バッチリ。
:うん。よーできとるね。じゃ次は・・この見本を見て・・。
:でもこれがあれになるのかな。
:最初はどうなるかと思った・・。あ、この細くするのもこれでやるんですか。
:そうそう。
:ムリの様な気がするわ。
:これはこれで、もう形ね。(半分すでに満足、半分あきらめ)
≪削りすぎるとなくなるよ≫
:ありがち。だんだん細くなってるよ。いいんだよ、これで(自分を納得させる)
:(テツヤくんを見て)かまえがいいから、うまくやれるよ。
:かまえは大事だから、かまえは・・。

ガァーッ(歯医者の様な機械)

:けっこうサーッとスゴイ削れる。
:オレ、これからどうやって変化させようか迷ってんだけど・・。
≪少しづつ細くなってないかい、テツヤくん≫
:なってる。
:もうこれでいいんじゃない。

様子を見ていた崎ちゃんはうなづく。
OK出ました。

:もっと手を加えんといかんけど・・(田村くんを見て)見た感じは彼もいいよ。
:ウーン。
:はじめてにしてはよく出来てるよね。

こうして出来上がったのはシンプルな指輪です。
なるほど4人共、いい仕事してますねぇ。「手に職」体験できあがった作品はそれぞれの手アカもつけてプレゼントしちゃいます。
小川凧店の小川さん。
安田鼈甲の安田さん。
本当にお世話になりました。旅の途中のいい想い出になりました。
師匠たちはほめてくれましたが、実際のメンバーの仕事ぶりはもちろん・・まだまだ・・当分スピッツをやめられそうにありません。


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