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FLYING POSTMAN PRESS

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MONTHLY COVER ARTIST SPECIAL INTERVIEW
世の中が良くなってきてるとは全然思えないんだけど
バンドマンはそんな時こそバカにならなきゃいけない
リリカルな歌詞、耳に残るメロディー、そして心の琴線に優しく触れる声・・・。
スピッツの生み出す楽曲は、今や日本のミュージックシーンにおける”定番”だ。
だからこそ彼らのアルバムに対峙すると、その振り幅の大きさに改めて驚かされる。
遊び心も満載な最新作『スーベニア』について、草野マサムネと田村明浩に訊いてみた。

・・・前作『三日月ロック』は、バンド結成15周年で10枚目のオリジナルアルバム
でしたよね。そうしたひとつの”区切り”を経て、今回はどんな気持ちでアルバム制作
に挑んだんですか?

草野(Vo.&G.)「『三日月ロック』の時は、なんとなく初心に戻るような気持ちがあったんですよ。ツアーの際にもアコースティックコーナーを設けてみたりして・・。だから今回はその”続き”って気持ちで、弾き語りでも歌える曲を作ろうという思いがまずありましたね」

田村(B.)「実は『三日月ロック』の前の『ハヤブサ』を作ったことでかなりのことが完結していて、その後にすごく長いツアーをやったことでさらに完結した感じだったんです。いろんな意味でリセットできて、その上で『三日月ロック』を作ってまたツアーに出て・・。そうするうちに、弾き語りでも成立するアルバムを作りたい、シンプルな音を出したいと思うようになりました。シンプルというのは4人の音を感じさせるようなものってことなんですけど」

・・・そういうことって、アルバム制作前にメンバー間で話し合ったりするんですか?

田村「全然ないです(笑)」

草野「もうそこは雰囲気で・・・何諸Nもやってますから。テレビの話や食べ物の話をするくらいで、そこからテレパシーのように感じ取るっていう(笑)。あんまり音楽の話とかはしないんですよ。でも上手くいってるバンドって、そういうもんだと思うんですよね。
自分たちのことを真剣に話してるバンドって、あまり上手くいってないんじゃないかなぁ」

田村「じゃあ俺らが何も考えてないかっていうとそうじゃなくて、それぞれにちゃんと考えててベクトルは同じ方向を向いてるので・・。それに、草野の作ってきた曲を聴いたらわかりますし。俺らの仕事は、曲のテイストを感じ取って、それをいかに膨らませていくかってことですから」

・・・”膨らませる”っていうのは、スピッツの楽曲のアレンジの面白さにも繋がりますよね。今回のアルバムでも・・・。

草野「5曲目でしょ(笑)?」

・・・そうですね、5曲目の『ナンプラー日和』なんてまさに(笑)。

草野「前から三線の音を取り入れてみたいなぁと思ってたんですよ。沖縄の音楽が好きで、ずっと聴いてたんで。でも頑張って沖縄音楽のテイストを取り入れても、THE BOOMの『島唄』は越えられない。自分なりの消化の仕方、自分なりのフィルターを通した方法で取り入れられないか・・・と思っていたんです。で、スピッツのロックっぽいところと三線の音をそのまま融合させたら面白いんじゃないかと思ったわけです」

・・・10曲目の『自転車』もスカのリズムで異色ですよね。

草野「この曲、実は10年くらい前に一度合わせたことがあったんですが、その時はボツにしたんですよ。こういうスカのリズムの曲って音のバンドブームの頃にいっぱいあったから、ちょっと安易な気がして・・・。でもさすがに21世紀になったことだしいいだろうってことで、今回復活させてみました」

田村「当時は試行錯誤して”レッド・ツェッペリンがレゲエのリズムを取り入れた感じ”とか、いろいろ研究したんですけど上手くできなくて(笑)。今回はそういうのは抜きにして、自然に演奏したって感じでしたね」

草野「一番最後にレコーディングして”これは(アルバムには)入んねぇだろうな”と思ってたら、なんか入っちゃいました(笑)」

・・・草野さんが曲を作る前の段階で、他のメンバーから注文やアイデアを募ったりはしないんですか?

田村「そうすることも、微妙にあるかなぁ?
アルバムの選曲会議の時に「1曲目に来るようなのが欲しいよね」とか「もうちょっと、こういう感じの曲があればいいよね」とか・・・。
草野のすごいところは、そういう注文を受けるとすぐ持ってくるところなんですよ。アイデア自体は普段からたくさんあるらしくて」

草野「要望を言ってもらった方がいいんですよね。とっても現代っ子な感じなんだけど、制約がある方が作り易いっていう(笑)」

田村「今回は、1曲1曲のクオリティーは高いと思ってたんですが、バンドとしてのカラーや統一性がなかなか見えてこなくて・・・。それが、『春の歌』ができてそれを1曲目に置いたことで、すべての辻褄が合った気がしたんです。アルバム全体のトータルカラー、方向性が決まったというか。その時に、ようやくゴールが見えた気がしました」

・・・ちなみに『春の歌』で決まったその方向性とは?

田村「う〜ん・・・個人的なイメージなんだけど・・イントロで明確なバンドイメージを示しつつ、全体は大きくて明るいというか・・。説明しづらいです、とても(笑)」

・・・『春の歌』もそうですが、その次の『ありふれた人生』もストリングスが入ってきたりして広がりを感じさせますよね。

草野「前作の『三日月ロック』の1,2曲目が『夜を駆ける』『水色の街』というダークなイメージの曲で始まったんですよね。闇の中を手探りするような感じで・・・。でも今回は、カラ元気でもいいから明るくポジティブな曲で始めようって意識してました。(前作をリリースした)2年前から比べて、世の中が良くなってきてるとは全然思えないんだけど、バンドマンはそんな時こそバカにならなきゃいけないんじゃないかって思って。
だから”張り切ってまいりましょー!”って感じで始まるアルバムになってると思います」

・・・そういう曲の並びなんかも、かなり悩んで決める方ですか?

田村「今回は最初に「12曲でいこう!」って決めてたんですよ。人のアルバムを聴いた時とか自分たちの曲の長さを考えた時に、12曲がベストだと思ってて。だけど、レコーディングしてるとそれぞれの曲に思い入れがあるから、なかなか削れなくて・・。どの曲を落とすか散々悩んだ挙げ句、思いきって13曲にしたらピッタリ収まったんですね。しかも13曲にした方が、短く感じられたんですよ」

・・・不思議ですねぇ。

田村「うん。多分どの曲が欠けても『スーベニア』というアルバムは成り立たなかったんだなぁ、と」

・・・細かいことを訊くようですけど、曲間の秒数って意識的に変えてますか?

草野「はい。俺はすごくせっかちなんで、次の曲が始まるまでの時間が長いのってイヤなんですよ。曲がフェードインしてくるのとかも嫌い(笑)。
前の曲がガ−ンと終わって、次の曲がバーンと出てくるのが好きなんです」

・・・『ナンプラー日和』から『正夢』に移るところなんて、まさにそうですよね。

草野「そうそう、1曲に繋がってるみたいですよね」

田村「『正夢』はもともとシングルとしては考えてなかったですからね。結果的にシングルになったというだけで・・。だから気持ちとしては、『ナンプラー日和』があって『正夢』が来るっていうのが、本来の『正夢』の位置なんです」

草野「やっぱキムタクはSMAPの中にいてこそ輝く、みたいな(笑)。
『正夢』とキムタクを同じにするのもおこがましいですが・・・」

・・・あと、スピッツの曲といえばやはり草野さんの声が特徴的ですが、ボーカルスタイルは昔からまったく変わってないんですか?

草野「いつも言ってるんですけど、あまり自分の声は好きじゃないんで・・。だから変にテクニックを付けたように歌うのも恥ずかしいというか、もうバカ正直な歌い方しかできないんです。その分、カラオケで谷村新司さんのモノマネとかすると燃えるんですけどね(笑)。・・まぁ、歌い方は変えられないです」

田村「俺から見て草野が変わったなと思うのは、今回のアルバムから自分の声の質感を大事にするようになったよね。今までは草野の声が持つ色気のある成分を削り気味にしちゃってたんで、素っ気なかったんですよ。それはそれで声が前に出てきてよく通じるんですけど、”大事なところを削っちゃってる!”っていうのは、実は俺は『三日月ロック』とかでも感じてました。でも今回から、草野が自分で声の成分をちゃんと気にしだしたっていうか・・・」

草野「ちょっとね、声を楽器のひとつとして捉えながらディレクションするようになったんですよ。より客観的に自分の声を見れるようになった感じがします」

田村「以前は”いいよ、俺の声なんかどうでも”みたいな、ちょっと自虐的な感じがあったんですけどね。そういう部分が今回なくなったのは”弾き語りでも成立するアルバムを作りたい”っていう気持ちが生まれたからだと思います。スピッツの武器は、やっぱり草野の声とメロディーと歌詞だと思ってるんで、それをいかに伝えるかっていうのが俺のテーマでもあるんですよね」

・・・歌詞といえば、スピッツの曲はあまり自己主張を押しつけてこないですよね。”僕は”とか”僕が”といった一人称の主語がすごく少ない気がするんですが。

草野「え、そうですか?甘ったれな性格が出ちゃってるのかなぁ(笑)。バンドを始めた10代の頃なんかは、今にして思えば”俺が、俺が”っていう目立ちたがり屋なところがあったんですけど、だんだん客観的にそういう自分が恥ずかしくなってきたんです。目立って然るべき人というのはもちろん存在するんだけど、自分はそうじゃないのかもって思えてきて・・・。だから”俺はこうだ!”って歌うことに、照れがあるんですよ。一人称を使うことに抵抗があるのかもしれない」

田村「草野に限らず、メンバーもスタッフもそういうところがあるかもしれないですね。それで物事がなかなか進まない時もあるんですけど(笑)」

草野「消極的なバンドだなぁ・・・(笑)。・・・あ、思い出した。小学生の時、親や先生から「もっと積極性を持ちなさい」ってよく言われてて、積極性とか積極的とかいう言葉が嫌いだったんだよね、俺(笑)。今でも、ふと”俺の曲でいいのかな?””俺の声でもいいのかな?”って思うことがあります」

田村「でもそれは俺も同じで、常に”もっとベース上手くならなきゃ”って思ってるんで、多分そういう部分でバンドが上手く進んでるんじゃないかなぁ。それが、スピッツというバンドが長く続いてきた要因だと思います」

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